るのである。
其結果、すつかり態度を替へて出来上つたのが此本で、実は、土岐さんにとつては第一次の大きなむだ[#「むだ」に傍点]修業の結果である。読者諸君は、其為に大いに救はれる事になつた訣である。人物の選択については、議論もあらうけれど、其には私も責任の片棒を落してゐる。敢へて此よき友がきの上に、更に反古張りの楯を竪てる所以である。

     一一 新葉集

南朝の新葉集の値ぶみは、昔から歴史の背景を勘定に入れ過ぎてかゝつてゐるところがある。だが、二条伝統の欽定――此集は準勅撰集――歌集では、まづ殆ど、最後の飛躍を示したものと言うてよからう。後醍醐院の気魄は、技巧を経れば、後鳥羽院の其に達するであらう。藤原師賢の叙事と抒情との調和――やゝ感傷に過ぎるが――した態度は、此集の後世から与へられた値うちづけの第一の目安らしいが、彼は確かに成功した作物を残した。此集になつて自叙伝歌集の態度が、明らかに復活して来たのであつた。其中、殊に個性の明らかなのは、何と言うても、後村上天皇であらう。表現の的確さは乏しいけれども、がら[#「がら」に傍点]の極めて大きな歌口である。
新葉集は、詞書きの殊に多
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