の古い姿を遺した巻々には、其《その》模様が手にとる如く見られるのである。かうした時勢は、宮廷の儀礼古詞なる大歌《オホウタ》(宮廷詩)にも投影した。伝承を固執する宮廷詩も、おのれから短篇化して行つた。さうして民間に威勢のよかつた短歌の形が、其機運に乗り込んで来た。
かうして謡ひ物としての独立性を認められた短歌は、其《それ》自体の中に、本歌《モトウタ》及び、助歌反乱の末歌《スヱウタ》の二部を考へ出して、ながめ[#「ながめ」に傍線]謡ひを以て、間を合せた。「57・57・7」から「57・5・77」へ、それから早くも、平安京以前に「575・77」に詠み感ぜられる形さへ出て来たのは、此為であつた。
第二聯の5の句が、第一聯の結びと、第二聯の起しとに繰り返された声楽上の意識が、音脚の上に現れて、句法・発想法を変化させて行つた。くり返しや、挿入の囃し詞《ことば》は自由に使はれても、主要な休止の意識は「575・577」の形を採らせた。此には、一つ前の民謡の型として、尚《なほ》勢力を持ち続けて居た結集《ケツジフ》唱歌出身の旋頭歌《セドウカ》の口拍子が、さうした第三句游離の形と発想とを誘うたのである。それが
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