的発想を直訳したので、無機的に固定してゐる。(三)[#「(三)」は縦中横]口語的発想法を用ゐるなら、歌全体に脈搏の伝つてゐるものでなくてはならぬ。水に油を雑へたやうなものであつては、邪魔にこそなれ、口語を取り容れた価値はないのである。大正五年十二月号の「煙草の花」に見えた、白秋氏の「たまらず雀が可愛くなるの」のの[#「の」に傍点]は、固定してゐる。言ひ換へれば有機的でないので、そこに一種の嫌味が生じたのである。部分的に、口語と文語の発想法が存在してゐるやうでは駄目である。(四)[#「(四)」は縦中横]また、口語的発想は、どうかすると散文的に流れ易い。此はとりわけ、避けねばならぬことで、景樹のわれながら[#「われながら」に傍点]は一首に律文情調の漲ることを碍げてゐる。白秋氏のかあゆくなるの[#「かあゆくなるの」に傍点]も固定してゐる為に、散文に過ぎなくなつてしまつた。(五)[#「(五)」は縦中横]また、口語的発想法を用ゐるには、厳密な観照態度を用ゐなければならぬ。若し、明徹した意識を働すことを閑却してをつたら、とんでもない発想法を捉へて得々とするやうな事があるであらう。景樹の場合でも、観
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