に接する為の資格を得る方法である。後世の神道家は、吉事祓へ・悪事祓へと対照して言ふが、元来、吉事に祓へはない筈である。吉事をまつため、迎ふる為の行事は、禊ぎである。其に対して、祓へは悪事を前提として行はれるものである。謂はゞ、祓へは後世の刑罰に当るものである。
宮廷で大祓へというて居られるのは、実は禊ぎであつて、平安朝の初期から、間違うて居る。だが、まづ罪といふ事を考へて見る。大祓へのうちに、祓ふべき罪・穢れ即、神に対して、慎しむべき事を罪といふ。其中で「天つ罪」といふのは、天上の罪といふ事で、普通にはすさのをの[#「すさのをの」に傍線]尊が、天上で冒した罪を斥していふ。それから此国で慎しまねばならぬ罪を「国つ罪」といふ。国つ罪の中には、勿論慎しまなければならぬ事のあるのは勿論だが、又さうでなく、何でも無い様なのがある。譬へば、這ふ虫の禍罪《ワザハヒ》・たかつどりの[#「たかつどりの」に傍線]禍、かういふのがある。此は、鳥や蛇が家に這入つて来たのは、此家が、神の家になつたといふ標で、其故に慎しまねばならぬ、といふ意味である。
奈良朝の頃でも、此禊ぎと祓へとを混用して、両方とも慎しみ、と
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