オフスマ》と申して居る。彼のににぎの尊[#「ににぎの尊」に傍線]が天降りせられる時には、此を被つて居られた。此|真床襲衾《マドコオフスマ》こそ、大嘗祭の褥裳を考へるよすが[#「よすが」に傍点]ともなり、皇太子《ヒツギノミコ》の物忌みの生活を考へるよすが[#「よすが」に傍点]ともなる。物忌みの期間中、外の日を避ける為にかぶるものが、真床襲衾である。此を取り除いた時に、完全な天子様となるのである。此は、日本紀の話であるが、此を毎年の行事でいへば、新嘗祭が済んだ後、直に鎮魂祭が行はれ、其がすんで、元旦の四方拝朝賀式が行はれる。だが此は、元は、一夜の中に一続きに行はれたもので、秋祭りの新嘗祭と、冬祭りの鎮魂祭即、真床襲衾から出て来られ、やがて高御座にお昇りなされて、仰せ言を下される。此らの事は元来、一続きに行はれたのであるが、暦法の変化で、分離して行はれる様になつたのである。
日嗣ぎの皇子《ミコ》が、日の皇子(天子様)におなりなされると、天子様としての仰せ言が下る。すると、群臣は天子様に対して、寿言《ヨゴト》を申し上げる。寿言の正確な意味は、齢を祝福申し上げる、といふ処にある。すめみまの[#「
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