である。故に譬ひ、肉体は変つても、此魂が這入ると、全く同一な天子様となるのである。出雲の国造家では、親が死ぬと、喪がなくて、直に其子が立つて、国造となる。肉体の死によつて、国造たる魂は、何の変化も受けないのである。
天子様に於ても、同様である。天皇魂は、唯一つである。此魂を持つて居られる御方の事を、日の神子《ミコ》といふ。そして、此日の神子《ミコ》となるべき御方の事を、日つぎのみこ[#「日つぎのみこ」に傍線]といふ。日つぎの皇子[#「日つぎの皇子」に傍線]とは、皇太子と限定された方を申し上げる語ではない。天子様御一代には、日つぎのみこ[#「日つぎのみこ」に傍線]様は、幾人もお在りなされる。そして、皇太子様の事をば、みこのみこと[#「みこのみこと」に傍線]と申し上げたのである。
天子様が崩御なされて、次の天子様がお立ちになる間に、おほみものおもひ[#「おほみものおもひ」に傍線](大喪)といふのがある。此時期は、日本に於ては、日つぎのみこ[#「日つぎのみこ」に傍線]の中のお一方が、日の御子(天子様)となる為の資格を完成する時、と見る事が出来る。祝詞や、古い文章を見ると、「天のみかげ・日のみ
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