アヅミ》の鎮魂式は、海人部の者が取扱つたもので、此は、特殊な面白味があつたので、日本元来のみたまふり[#「みたまふり」に傍線]とは異つた待遇を受けて、十二月に行はれる事になつた。古来の日本流のがみたまふり[#「みたまふり」に傍線]で、阿曇のは、たましづめ[#「たましづめ」に傍線]の意義が、主なる要素をなして居る。外来魂を身に附けるのが、古い意義の、日本伝来のみたまふり[#「みたまふり」に傍線]で、魂の発散を防止し、且既に、発散した魂をして、鎮まらせる。此が、阿曇のたましづめ[#「たましづめ」に傍線]即、御神楽である。
とにかく、鎮魂式といふのは、群臣から天子様に、魂を差し上げる事だ、とわかればよい。同時に、冬というても、時代によつては、十月の事でもあり、十一月の事でもあり、又十二月の事でもあつた、といふ事を承知してかゝらねばならぬ。
此鎮魂を行ふと、天子様はえらくなる。併し、かうした行事を毎年やるのは、どうした事か。一代に一度やれば、よろしいのであるが、昔の人は、魂は一年間活動すると、もう疲れて役に立たなくなる、と考へて居たから、毎年やるのである。毎年々々、新しく復活して来ねばならぬ、
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