が出る事などいふ意味が、古典に用ゐられてゐる。枝の如く分れて出るものを、取扱ふ行事が、冬の祭りである。ふゆ[#「ふゆ」に傍線]は、又古くは、ふる[#「ふる」に傍線]と同じであつた。元来、ふる[#「ふる」に傍線]といふ事は、衝突する事であるが、古くは、密着するといふ意味である。此処から「触れる」といふ意味も出て来る。
日本の古代の考へでは、或時期に、魂が人間の身体に、附着しに来る時があつた。此時期が冬であつた。歳、窮つた時に、外から来る魂を呼んで、身体へ附着させる、謂はゞ、魂の切り替へを行ふ時期が、冬であつた。吾々の祖先の信仰から言ふと、人間の威力の根元は魂で、此強い魂を附けると、人間は威力を生じ、精力を増すのである。
此魂は、外から来るもので、西洋で謂ふ処のまなあ[#「まなあ」に傍線]である。此魂が来て附着する事を、日本ではふる[#「ふる」に傍線]といふ。そして、魂の附着を司る人々があつた。毎年、冬になると、此魂を呼んで附着させる。すると春から、新しい力を生じて活動する。今から考へると、一生に只一度つければよい訣だが、不安に感じたのでもあらう。毎年繰り返した。新嘗を毎年、繰り返すのと同
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