守つた――海竜は、河童とまでなり下つて了うた。
でも、此をひようすべ[#「ひようすべ」に傍線]と言ふ地方が多く、春山から下り、冬山に入るものとせられてゐるのは、山の神と海の神との職掌混淆の筋合ひを辿つて見れば、難問題でもない。ひようすべ[#「ひようすべ」に傍線]と言ふ名も、穴師|兵主《ヒヤウズ》神に関係するらしく、播州に因達《イタテ》兵主神のあるのは、風土記にある、穴師神人の移動布教によるものらしい。
秋祭りは、農村の大事であるけれど、最古くからあつたものかは疑はしく、山地に這入つてからの発生で、新嘗は冬に這入つてから行はれたものであるらしい。日本の文献で見れば、春祭りが一等古く、夏祭りが最新しい。秋祭りは、古げに見えて、田植ゑ時の神遊びよりも遅れて起つてゐる、と言はれさうである。
七 神嘗祭り
九月上旬までに集まつた諸国の荷前《ノザキ》の初穂は、中旬に、まづ伊勢両宮に進められる。其後、十一月になつてから、近親の陵墓にも初穂が進められ、此と前後して新嘗祭りがとり行はれる。第一は、神嘗祭りであり、第二は荷前《ノザキ》[#(ノ)]使である。
米の初穂を献るのは、長上に服従を誓ふ形式で、我が
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