」に傍線]として光来を仰ぎ、咒詞を唱へて貰ふ事があつた。さうした時代にも、まれびと[#「まれびと」に傍線]は家あるじに対して、舞ひをした処女或は、接待役に出た家刀自を、一夜づま[#「一夜づま」に傍線]に所望する事も出来たのである。平安朝以後頻りに行はれた上流公家の大饗《ダイキヤウ》も、やはり一階上の先輩を主賓として催された。まれびと[#「まれびと」に傍線]の替りに、寺院の食堂の習慣を移して、尊者《ソンジヤ》と称へてゐた。
六 海の神・山の神
まれびと[#「まれびと」に傍線]が贄のあるじを享けに来るのは、多くは一家の私の祭りであつた様だが、此が村中の祭事として、村人の出こぞつた前で行はれる事もあつたらしい。いづれにしても、此等のまれびと[#「まれびと」に傍線]が神として考へられ、社に祀られる様になると、家祭りが村中に拡がつて来る。さうした社の中には、却つて、さうした稀に臨む神を祀る事を忘れて、土地に常在する邪悪の精霊を斎はうて、まれびと[#「まれびと」に傍線]と混淆したものも多い。其でも、田の精霊・苑《ハタ》の精霊を作物の神と考へた痕は、僅かしかない。田苑に水をくれる海の神を、田苑の守り
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