い家になると二体も三体も祀っていることがある。
桑の木の二股の枝をとってこしらえる。だから先のほうを頭にして、頭だけの人形である。この「おしらさま」に毎年一枚ずつ着物を着せてやる。着物を着せるというのは、「おしらさま」がお雛さまだからだ。つまりもとの意味は、「おしらさま」がその家のけがれを背負っている、ということになる。だから古い「おしらさま」は、布の中に埋もれている。奥州では、「いたこ」が「おしらさま」を使いにくる。これをおしらさまをあそばせる、といい、「おしらあそび」という。「あそばす」とは踊らすことである。この起源は、紀州の熊野の巫女と思われる。それが定住して一派を開いたのである。一体のこともあるが普通は二体である。「おしらさま」が自分の心を感じさせる。この場合、鈴のついているのは、鈴の鳴り方で判断することもある。また、「いたこ」が勝手に判断することもある。そういうときには現実に昔の雛遊びの様子がわかる。もちろん変化がある。われわれがみただけでも、「いたこ」が房主のように衣を着てやるのも、平服でやるのもある。
「いたこ」は条件的に目が悪い。つまり盲目が感じるのである。そのときに
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