けである。日本では何か事情があって、これに親しみを感じてきたのだと思われる。
一方、他の「ひひな」をみると、このことは既に述べたが、日本の雛の歴史を調べるのに閑却できないのは、奥州一円にみられる「おしらさま」の存在である。こちらにくると観音さまや天照大神または蚕玉《こだま》さま(蚕の守護神)の画像(掛図)になっている。これは大きな変化である。金田一先生は「おしらさま」は「おひらさま」の訛りで、結局雛と同じになる。折口のいうことと同じだといわれた。
われわれはめおと[#「めおと」に傍点]雛を考えるが、雛はかならずしも二体なくてもよい。子供が雛の御殿を作って二体飾るから二体なくてはならぬと考えたのである。子供が家庭のなかで小さい家庭を作り、人形で小さい夫婦の生活をやってみる。そのために内裏雛ができたのである。奥州の「おしらさま」は、一体、二体、ときには三体のこともある。近代では主に蚕の守り神になっている。ということは、農村でいちばん大切な守り神ということになる。蚕を飼うほど、蚕の守り神の考えがおし及ぼしてきて、かきものを守り神とするようにさえなってきた。古ぼけるとまた新しく作るので、古
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