「あまがつ」(天児)というものがあって貴い人の寝間にあって守っていると考えているが、これは寝ている人の形代なのである。だんだん子供の寝間につくようになる。子供は寝ている間も、起きている間も同じである。それがだんだん変化して蓋のあるものになる。つまり天児から御伽婢子というものになる。御伽婢子は寝間におく連想から、汚ないものを入れるようになる。天児には何を入れたか、たぶん最初は何も入れたのでもなかろう。寝間の傍に獅子、狛犬がつく。獅子と狛犬とは区別がないのだろうが、獅子、狛犬というので二つになる。宮廷から出て、社でも貴族の家でもいちばん奥のところ、寝所とみられるところにおいてある。畢竟雛なのであるが、できる経路はわからぬ。しかし、寝間で番する根拠はわかる。仕事が変わっただけである。
「ひひな」は普通は人間の形代であり、人間の雛型だから、それがけがれを吸収する。だからそれを棄てればよいのだと考えている。ところが「ひひな」は古くから日本の家庭では玩具になっている。われわれは何ともなく思うが、「ひひな」はけがれを吸収したものだから、身辺にあるが恐しいものである。これが玩具となるのは飛躍しているわ
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