つても、恐らく餘程の頑固人でない限りは、快くうけ入れるだらう。愛讀者の中には、之を「選書十種」の中に入れる人もゐるに違ひない。私などが、ろくすつぽふ[#「ろくすつぽふ」に傍点]讀めぬ力で、僅かの原書を辿つたり、譯書で讀んだほうむず[#「ほうむず」に傍線]は、もう四十年或はもつと前の記憶になつてしまつてゐる。
此頃延原氏本によつて、すつかり忘れてゐた老先輩にめぐり遇つた樣な喜びを與へられてゐる。これに同感を表しておいでの同年輩の方も、多いことゝ考へる。かういふ風に、舊相識の書の復習を樂しんでゐる私には、漠としたものだが、心を掠めるどいる[#「どいる」に傍線]に對する感謝の心がある。
話の口ならし、手品の手ならし見たやうに、始中終《シヨツチユウ》論理演習の枕話《マクラ》をふつてゐる部分は、今見ても、數枚飛ばして讀みたくなるが、此頃になつて、つく/″\感じる部分がある。若い時代に、かう言ふ所はどう讀んでゐたかと反省せずには居られない。話の解決に多く見える行き方である。私ならどう書くだらうと言ふ氣がする。きりすと[#「きりすと」に傍線]教國人である作者が、きりすと[#「きりすと」に傍線]の子と
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