展して来た。天皇陛下が同時に、天つ神である、といふ観念は、其処から出発してゐるのであつて、其が惟神《かむながら》の根本の意味である。惟神とは「神それ自身」の意であつて、天皇陛下が唱へ言を遊ばされる為に、神格即惟神の現《アキ》つ御神《ミカミ》の御資格を得させられるのである。此惟神の観念は、中臣その他のみこともち[#「みこともち」に傍線]の上にも移して、考へる事が出来るのであつて、随つて、専《もつぱら》朝廷の神事を掌つた中臣が、優勢を占めるに至つたのは、固より当然の事である。
四
此中臣氏が、宮廷に於ける男性のみこともち[#「みこともち」に傍線]であつたのに対して、別に又、宮廷の婦人にも、一種のみこともち[#「みこともち」に傍線]らしいものがある。推察するところ、此等の婦人たちは、口でみこと[#「みこと」に傍線]を伝へたであらうと思はれるが、其が後に、文書の形に書き取られる様になつたのが、所謂、内侍宣・女房宣であらう。後期王朝になると、かういふ婦人たちを、みこともち[#「みこともち」に傍線]としての資格を持つてゐるもの、と考へてはゐなかつたらしいが、江家次第の類を見ると、まだ
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