雪まつりの面
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)新《ニヒ》野
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)其頃|天井《アマ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ますく[#「ますく」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひそ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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一昨々年の初春には、苦しい目を見た。信州下伊那の奥、新《ニヒ》野の伊豆権現の雪祭りに、早川さんと二人で、採訪旅行をしたことであつた。さうして、一週間といふもの完全に、小忌人《ヲミビト》の様な物忌みをして、村の神事役の人と共に一つになつて、祭儀の観察をさせて貰うてゐた。其揚句が、ちよつとの行き違ひから、村の大勢の人たちに反感を催されて、私の頭に、消防組の鳶口の一撃位は、来さうなけはひを感じた。あんな残念な事はなかつた。けれども、毎年新暦の正月十三日になると、今一度、信遠三の境山に囲まれた、あの山村の祭りに、あひたくてならない気がする。其中でも、殊に印象深く残つてゐるのは、正祭の前日の面しらべの行事で
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