#「あいぬ」に傍線]の詞曲「虎杖丸」の註釈で、
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るゑさん ruwessan, ru−esssan 道の出口(浜の大道へ出る口)の事なり。下《オ》り口の義なり。ru は道にて、essan の e は接頭語、san は出る意味なり。又下る意味なり。要するに、後方の高い処より、前方(浜)の低い方への運動なり(雑誌あらゝぎ[#「あらゝぎ」に傍線]大正七年六月号)。
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と説明して居られる。誠によく似た、語の出来ぐあひである。単に語族が一つだ、と言ふだけで、縁もゆかりもない、北の島人の語ばかりでなく、ほゞおなじ語を話し、兄弟の情を持ちあつてゐる我々の間には、勿論、同じ組織の語で、似た地形を表す事になつてゐる。
子どもの頃、よく印刷屋の表に立つて、為入《シイ》れの三文判の出《ダ》し箱に並んでゐる判の中から、折口とあるのを見つけようとして、折田・折目など言ふ姓に出逢ふばかりなのに、肩身狭い思ひのした事を覚えてゐる。古子姓を立てゝゐる、仲の兄進が、造士館高等学校の生徒で、まだ汽車の矢嶽を越えなかつた頃、薩摩領に入つたとある立て場で、馬車の窓から、折口と書い
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