の中でも、粟島即、すくなひこな[#「すくなひこな」に傍線]説を離さぬ人がある。
処が古事記・日本紀などを覗いた方には、直ぐ判ることだが、すくなひこなの命[#「すくなひこなの命」に傍線]以外にちやん[#「ちやん」に傍点]と淡島神があつて、あの住吉明神の后同様に、海に流されてゐるのである。即、天照大神などを始め、とてつ[#「とてつ」に傍点]もない程沢山の神々の親神であるいざなぎのみこと[#「いざなぎのみこと」に傍線]・いざなみのみこと[#「いざなみのみこと」に傍線]の最初にお生みになつたのが、此淡島神で、次が有名な蛭子神であつた。
遠い/\記・紀の昔から、既に、近世の粟島伝説の芽が育まれてゐたことが訣る。一体、此すくなひこな[#「すくなひこな」に傍線]は、常世の国から、おほくにぬしの命[#「おほくにぬしの命」に傍線]の処へ渡つて来た神であり、而も、おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]と共に、医薬の神になつてゐるし、粟に引かれて来た粟といふ聯関もあり、かた/″\淡島神とごつちや[#「ごつちや」に傍点]にされる原因に乏しくないのである。でも、其は後世の合理的な見解に過ぎないので、もつと色々
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