水中の友
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)爲來《シキタ》り

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]《マブタ》を温める

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)われ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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いつまでも ものを言はなくなつた友人――。
もつとも 若かつたひとり――。
たゞの一度も 話をしたことのない
二三行の手紙も 彼に書いたことのない私――
併し 私の友情を しづかに 享けとつてゐてくれた彼を 感じる。

――友人の死んだ時
私は、嵐の聲を聞いた。

若い世間は、手をあげて迎へるやうに
はなやかに その死を讚へた――。
老成した世間は、もみくしやになつた語で、
澁面を表情した――。

一等高さの教養を持つた人だけが――、
何げない貌で
たゞ その姿を 消ゆるにまかせるだらう――。
さう言ふ この國の爲來《シキタ》りを
彼は
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