めの山入りのような形をとった。これで今年の早処女《さおとめ》となる神女が定まる。男もおおかた同じころから物忌み生活に入る。成年戒を今年授かろうとする者どもはもとより、受戒者もおなじく禁欲生活を長く経なければならぬ。霖雨《ながあめ》の候の謹身《ツヽミ》であるから「ながめ忌み」とも「雨《アマ》づゝみ」とも言うた。後には、いつでもふり続く雨天の籠居を言うようになった。
このながめいみ[#「ながめいみ」に傍線]に入った標《シルシ》は、宮廷貴族の家長の行《おこの》うたみづのをひも[#「みづのをひも」に傍線]や、天の羽衣ようの物をつけることであった。後代には、常もとりかく[#「とりかく」に傍点]ようになったが、これは田植えのはじまるまでのことで、いよいよ早苗をとり出すようになると、この物忌みのひも[#「ひも」に傍線]は解き去られて、完全に、神としてのふるまいが許される。それまでの長雨忌《ナガメイ》みの間を「馬にこそ、ふもだしかくれ」と歌われた繋《カイ》・絆《ホダシ》(すべて、ふもだし[#「ふもだし」に傍線])の役目をするのが、ひも[#「ひも」に傍線]であった。こういう若い神たちには、中心となる神
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