知流《コノハナチル》比売」に婚《ア》うたとある。この系統は皆水に関係ある神ばかりである。だから、このはなちるひめ[#「このはなちるひめ」に傍線]も、さくやひめ[#「さくやひめ」に傍線]とほとんどおなじ性格の神女で、禊ぎに深い因縁のあることを示しているのだと思う。

     一四 たな[#「たな」に傍線]という語

 漢風習合以前のたなばたつめ[#「たなばたつめ」に傍線]の輪廓は、これでほぼ書けたと思う。だが、七月七日という日どりは、星祭りの支配を受けているのである。実は「夏と秋とゆきあひの早稲のほの/″\と」と言うている、季節の交叉点に行《おこの》うたゆきあい祭り[#「ゆきあい祭り」に傍線]であったらしい。
 初春の祭りに、ただ一度おとずれたぎりの遠つ神が、しばしば来臨するようになった。これは、先住漢民族の茫漠たる道教風の伝承が、相混じていたためもある。ゆきあい祭り[#「ゆきあい祭り」に傍線]を重く見るのも、それである。春と夏とのゆきあい[#「ゆきあい」に傍線]に行うた鎮花祭と同じ意義のもので、奈良朝よりも古くから、邪気送りの神事が現れたことは考えられる。鎮花祭については、別に言うお
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