地上のものと混同して、さしつかえは感じなかったのである。たなばたつめ[#「たなばたつめ」に傍線]は、天上の聖職を奉仕するものとも考えられた。「あめなるや、弟《おと》たなばたの……」と言うようになったわけである。天の棚機津女《たなばたつめ》を考えることができれば、それにあたかも当る織女星に習合もせられ、また錯誤からくる調和もできやすい。
 おと・たなばた[#「おと・たなばた」に傍線]を言うからは、水の神女に二人以上を進めたこともあるのだ。天上の忌服殿《イムハタドノ》に奉仕するわかひるめ[#「わかひるめ」に傍線]に対するおほひるめ[#「おほひるめ」に傍線]のあったことは、最高の巫女でも、手ずから神の御服を織ったことを示すのだ。
 古代には、機に関した讃え名らしい貴女の名が多かった。二三をとり出すと、おしほみゝの尊[#「おしほみゝの尊」に傍線]の后は、たくはた・ちはた媛[#「たくはた・ちはた媛」に傍線](また、たくはた・ちゝ媛[#「たくはた・ちゝ媛」に傍線])と申した。前にも述べた大国|不遅《フヂ》の女垂仁天皇に召された水の女らしい貴女も、かりはたとべ[#「かりはたとべ」に傍線](いま一人か
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