、我々の持つてゐる神様のある大きな部分までは、何の説明も出来ないで、間違ひだと放置してしまふことなのです。それを我々が考へて行きますと、例へばあいぬ[#「あいぬ」に傍線]の熊を殺して祭る熊祭りがあります。よその人間は非常に残酷だと考へますけれども、あいぬ[#「あいぬ」に傍線]人には熊自身の感情も訣つてゐるのです。死ねば天に昇つて神に生れ変るのだと思つてゐる。さう信じて殺すわけなんです。これは日本と比較研究すべきことなのか、日本の信仰があいぬ[#「あいぬ」に傍線]の社会に移つて行つたのか、簡単に言ふことは出来ませんけれども、あいぬ[#「あいぬ」に傍線]とは種族において全然違つてゐるにも拘らず、信仰の上に非常に似た所があるといふことは事実です。これは偶然の暗合なのか、それとも当然の理由があるのか考へなければなりません。
他界の生物がこの世界を訪れて来るのは、この世界に来ることによつて、再び他界に帰つたとき、立派な神になることが出来る。かぐや姫も犯しがあつて日本の地へ来たが、それが償はれたから帰へるのだといふことを言つてをりますけれども、その理由は誰も説明出来ないから、天から来るには皆何か失
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