系統を引いた恋愛物には、男と女の兄妹及び、肉親の愛のもつれを扱ふものが出て来る訣です。
さういふ風に、女の人は陽の目も見ないと言ひますが、本当に陽の目も見ないやうな、部屋に生活をしてをつた。尤も日本では本当のことかどうか知りませんが、ふれいざあ[#「ふれいざあ」に傍線]教授のごうるでん・ばう[#「ごうるでん・ばう」に傍線]を見ますと、日本の天子は地上に足をつけない。顔も日にさらして外出せない。尤も地や、外光が天子の威光を吸ひ込んでしまふからだといふやうなことを書いてをりますが、併しそれも種のないことではない。さういふことを、日本に来た外国人が聞いて書いた。まさかそこまで伝説化してもゐないでせうけれども、さういふ風に、宮廷その他の神事に仕へる人たちは、禁忌を守つてゐたに違ひない。さういふ風に神事の生活をしてゐる所では、非常な謹慎の生活をしてをりますために家庭にをつてもなか/\陽にあたらない。いはゆるあめのみかげ[#「あめのみかげ」に傍線]、ひのみかげ[#「ひのみかげ」に傍線]といふ言葉がそれを示してゐるのです。宮殿の屋根が天日の陰となつて、神秘な人の威力の逸出を防ぐことなのでした。さうい
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