聴きに行きました。けれども、年を取つてをられまして、昔の評判と、実際とは相当違ふといふやうな感じを、僣越ながら受けまして。所が、畠山健先生の万葉講義といふのは素晴らしいいい講義だつたので、大変我々万葉学の刺戟を受けまして、やはりかうして教へて下さるだけに、それだけの深い用意があつたのだといふことをば始めてつく/″\と知つたことでした。もうその先生たちも皆亡くなられて、お墓々々も冷えきつてゐます。さうして、今では亦、私の受けた印象などになかつた事のやうに、木村先生が、江戸持ち越しの万葉学の権威のやうな形に考へをさめられてゐます。其は其として、よい事なのです。かういふ話をしておくのも、それらの先生の供養にも、国学院大学の歴史の補ひにもなるかと思つて申上げてゐるわけですが、よく考へて見ますと、実際古典を専門にしてまゐりました我々の国学院でありますが、この国学院で本道に万葉を専門にしてをられた人を名ざしする段になると、容易なことではありません。木村先生に習ひましたけれども、もう先生の万葉には我々若干あき足らぬ気持を感じた位で、その外には、外の文科系統の文献の専門家は沢山いらつしやいましたが、万
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