春永話
折口信夫
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)城島《シキシマ》村
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)璃※[#「王+王」、第4水準2−80−64]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)むら/\
−−
[#ここから2字下げ]
むら/\と見えて たなびく顔見世の幟のほどを 過ぎて来にけり
[#ここで字下げ終わり]
昭和十年三月、私の作る所である。歌は誇るに値せぬが、之に関聯して私ひとり思ひ出の禁じ難いものがある。京の顔見世は、近年十二月行ふことになつてゐる。十一月末にさし迫つて初める為、十二月興行と謂つた形をとることになつてしまつた。此は全く、明治中頃からの新しい為来りに過ぎない。明治の末、大正の初年頃、京の顔見世と言へば、大阪からも見に行く風がはやり出した。ある年の顔見世に、口上の幕がついて鴈治郎が正座にすわつた。……「京の御見物様。毎度よんで頂きましてあり難い為合せに存じます。では御座りますが、ならうことなら
次へ
全8ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング