、誕生せられるものとした。さうして常に、新な日の神の御子が、此国に臨むものとの考へなのである。日の御子として、生れ変る期間の名が、天つ日高・虚つ日高の対句で表されて居たらしく、所謂|真床覆衾《マドコオフスマ》(神代紀)を被つて、外気に触れない物忌みを経て、血統以外の継承条件をも獲られたものであらう。
第一代の日の御子降臨の時に、祖母《オホミオヤ》神の寄与せられた物は、鏡と稲穂(紀)とで、古事記では其外に二神器及び、智恵の魂・力の魂・門神の魂をば添へられてゐる。同じ本には、鏡を御霊として居るが「わが前を拝む如斎きまつれ」と告げられたと言ふ合理的な語部の解釈を、其儘採用してゐる。鏡を和魂又は奇魂に、劒を荒魂に、玉を奇魂或は和魂と解せられぬでもないが、姑らく紀に拠つて、鏡だけを説く。此は、御代毎に新しく御母神から日の御子が受けるもの、と解した外来魂の象徴と見るのが、古義に叶ふらしい。
稲穂は、祝詞・寿詞を通じて、神孫の為の食物に分け与へられたものと考へて来てゐるが、稲穂を魂代とする豊受姫神が、保食神・豊うかのめ[#「豊うかのめ」に傍線]などの名で、色々な神に配せられ、生死を超越した物語を止め
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