はむや――其駒
さゝ(ひ)のくま 日前《ヒノクマ》川に駒とめて、しばし飲《ミヅカ》へ。かげをだに(我よそに)見む
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[#地から2字上げ]――古今集 昼目

又、

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いづこにか 駒をつながむ。あさひこがさすや 岡べのたま篠のうへに。たま篠のうへに
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[#地から2字上げ]――神楽 昼目
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此岡に 草刈る小子《ワクゴ》。然《シカ》な刈りそね。ありつゝも 君が来まさむ御馬草《ミマクサ》にせむ――万葉巻七
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類例は、煩はしい程ある。我々は昔から唯の処女が、恋人を待ち兼ねての心いそぎの現れと見て、単にいぢらしいものゝ類型と考へて来た。だが古い思案はちよつと待て、と云ひたくなる。私どもの長く最親しい同伴者西角井正慶君の新著「神楽研究」は劃期的の良書である。此章では、暫らく西角井君と二人分しやべらして頂くつもりである。神楽の「昼目歌」は、勿論其直前の「朝倉」に引き続いての朝歌である。詳しく言へば、吉々利々《キリキリ》で、明星《アカボシ》を仰いで、朝歌は初まるのである。さうして、実はもう
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