られて、「ほきと」を経た形は「ほいと」となり、――陪堂の字を宛てるのは、仏者・節用集類のさかしらである。――又単に「ほかひ」と称せられる事になつた。此等の者の職業は、だから一面、極めて畏怖すべきものを持つて居て、其過ぎ行く邑落において、怨み嫉みを受ける事を避けると共に、呪術を以て、よい結果を与へ去つて貰はうとした心持ちが、よく訣る。即、既に神その物でなくなつてゐたとしても、神を負ふ者であり、神を使ふ者である。だから大概は、食物を多く喰はせ、又は持ち還らせる事によつて、其をねぎらひ、あた[#「あた」に傍点]せられざらむことを期してゐた。だから当然多くの檀那《パトロン》場を廻ることになつたのである。乞食者の字面を「ほかひゞと」に宛てゝ居るのは、必ずしも正確に当つて居ないのである。此方から与へると言つた意味の方が多いのだ。かう言ふ生活法を採つて居るからと言つて、必ずすべてが前述の如き流離の民の末とは言へない。ある呪術ある村人が、其生活法を嫻《ナラ》つてさうした一団を組織した例も多いのである。彼等の間には、勢ひ、食物の貯蔵に関する知識が発達した。かれいひ[#「かれいひ」に傍線](かれひ・干飯)
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