神楽などに利用すれば、今度来る時への誓約《カネゴト》として利いて来る。草苅る事を禁ずる形式の歌は、此型を外にして、まだ幾つかの違つた形を持つて居る。ともかくも、遠旅《トホタビ》を来た賓客《マレビト》に対して、「その駒」に蒭飼《クサカ》ふ事は、歓待の一表出である。「其駒」自体の様に、何処に目的のあるやら、だから、腑の抜けた様な歌が、生彩を放つて来る訣である。
田楽は、恐らく固有の「田遊《タアソビ》」と踏歌《タウカ》・呪師《ジユシ》芸能の色んな形に混合したものと思はれる。だが単に庭或は、座敷芸と考へてはならない。群行即道行きの練り物であり、又「門入り」を主とするものであつた事は訣る。即、練道《レンダウ》の途次、立ち寄つて、芸能の一部を演じて行く家々があつた。水駅・飯駅・蒭駅など呼んだところから見ると、旅人の駅路を来るに擬したものと思つてよい。飯駅は、その家では屯食《トンジキ》にでもありつくのだらう。水駅は、人の上にも解せられるが、主として、馬に飲《みづか》ふ駅舎に見立てたのだらう。蒭駅は勿論、馬に飼ふ干草《ヒクサ》をくれる処との考へである。だから考へると、蒭量を藤氏の氏上相承の宝とした訣も
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