の風色を思ひ浮べると同時に、歌枕なるが故の地名的理会が、人々の気分に起つたのである。土地としては優雅な固有名詞を持ち、幻影として伴ふは、其沢の名に負ふ寂しい鴫たつ様である。此関係は、誹諧・発句の季題の効果同様であつて、其導きを為すものであつたのだ。
かうした幻影を被つたかうした土地に、秋の夕ぐれ、孤影を落して立つ様をも思ふ事の出来た当代の人には、心なき身といふ語も、決して反語とはとれなかつたであらう。俊慧に言はせれば「知られけり」が「野べの秋風身に沁みて」同様の見方から「腰の句したゝかに言ひ据ゑたり。あはれ乏し」とでも言ふだらう。けれども此歌、西行はやはり時代的文学態度から、極めて自然に作り成したので、近世の人の考へる様なこけおどし[#「こけおどし」に傍線]風な考へは、まじへなかつたらう。
後鳥羽院は、心ある[#「心ある」に傍線]方であつた。併し其は、前代の用語例に入るものである。当代の用法では、もう完全な「心ある」ものではなかつた。西行等の作物を中心として見られる「こゝろ」は、いろごのみ[#「いろごのみ」に傍線]に添へる一種の匂ひとして、とり込まれたに過ぎない。恋愛の孤独観や、風物の
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