唆る哀愁、かうした方面に、影響が来た。孤独であつてもかそかな[#「かそかな」に傍線]ものではなかつた。悲しくても、涙に誇りを感じる廃頽味を持つてゐた。此が一脈の糸筋を、前代以来の雑芸・小唄と引く、閨怨のあはれさであつた。だから、心ある[#「心ある」に傍線]方に進まうとすればする程、前代の、いろごのみ[#「いろごのみ」に傍線]・ものゝあはれ[#「ものゝあはれ」に傍線]を知ると言ふ内容に入るばかりであつた。院の如きは、平安中期ならば、典型的な心ある[#「心ある」に傍線]人であつたはずだ。が、後鳥羽院は、寧、太みに徹し、たけ[#「たけ」に傍線]ある作物と生活とを、極点まで貫かれたらよかつたのである。独り思ふ境涯に立つか、或は素質がさうだつたなら、群集の中にゐても、孤独を感じ得たであらう。が、院には、さうした悲劇的精神は、此隠岐本を抄して居られる間にも、やはり徹底しては、起つてゐなかつたものと思はれる。
或は思ふ。大きな永遠の意志があつて、至尊風の歌風を貫かさうと言ふ方に、院を向けてゐたのかも知れない。真のこゝろ[#「こゝろ」に傍線]を、至尊族伝来の太み[#「太み」に傍線]から拓かせよう、と企
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