ごと」に傍線]主義は、歌に従来の歌枕以外の語を入れ、優美と考へられて居ない事象をも優美にすることで、其結果は却つて、奇歌を作つた。俊慧は此考への概念を改めて、技巧に関心せず、平々と一気に歌ひあげて、たけ[#「たけ」に傍線]ある歌を作らうとしたらしい。だから感激と気魄とに任せてゐたのである。かうした風格は、隠者文学の先型となつたのであらう。隠者は、古来社会の制度外である。此に入ると、階級的制約を離れるから、上流の人と接するにも、従来の作法によらないでよい事になり、自由に出入りが出来たのだ。つまり僧侶と同じ待遇を受けるのであつた。だから後ほど、名だけ法師で半俗生活を営んで居るものが殖えて来た。
同じ感興派でも、俊慧の、伝統の固定した鈍さを持つたのとは別に、西行は感傷性に富んで居た。西行は、此まで、平安朝歌人の心づかない発想法を発見した。歌枕や、歌の制約に囚はれないで、歌ふことであつた。実感を包んで出す衣が、三十一字であつたのを、実感そのまゝ皮膚となり、肉となる事を知つた。彼も、常に都に上つて居たら、其歌の半分が既にさうなつてゐる様に、先づ屏風絵に描き替へ、物語絵に写し改めた様なものばかり残
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