学者源順などの方法の外に出てゐる。思ふに、曾丹は、あの作物を残したに拘らず、儒者気質の頑冥と、自負と、卑陋とを含んでゐる点、其出身の学曹たる事を暗示してゐるのである。源順などゝ識つたのも、さうした関係からであらう。
五 儒者の国文学に与へた痕
曾丹は、女房歌の抒情主義に対して、叙景態度を立てた人であらう。或は寧、情趣本位の主客融合境地をおし出して来たものであらう。古今「よみ人知らず」の風である。梨壺の歌人は、学者と伝統者とであつた。学者は、漢学見地から、短歌に学術的の基礎を与へようとする為に置かれたのだ。曾丹の出た時分は、詩文における故事・類句を見習うて、歌の上にもさうした物によつて、歌の品位と学問的位置が、確かにせられようとしかゝつた時であつた。まくらごと[#「まくらごと」に傍線]が歌としても生じなければならなかつた。和歌所の人々は、万葉・古今其他から其を採り出さうとした。
曾丹は、稍方面を異にした。気候方位の月位の月令式主題を採つて、之に恋歌を対立させた。其所属として口ずさみ歌――手習歌にも――にとの考へだらう。雑の部にでも入れるべきものを列ねてゐる。二個所、四季・恋
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