の影響が加つて、物尽しの外に日本の歌謡の一つの型を作つたのである。

     四

物尽しの、古代に於て、一つの発達した形になつたものは「読歌《ヨミウタ》」である。此は、節《フシ》まはしが少くて、朗読調に近いからだと説かれて来たのは、謂はれのないことである。さうした謡ひ方は、古代から現今まで言ふ所の「かたる」と言ふ用語例に入るのである。「よむ」の古い意義は、数へると言ふ所にある。つまりは、目に見える物一つ/\に、洩らさず歌詞を託けて行く歌を言ふので、後には変化して、武家時代の初めからは「言ひ立て」と称せられてゐる物の元となつたのである。今の万歳の柱ぼめ・屋敷ぼめの如く、そこにある物一々に関聯して祝言を述べ立てる歌であらうと思ふ。ほぎ[#「ほぎ」に傍線]歌の一種、建て物に関したものが、後には、替へ歌などが出来て、読み歌の特徴を失ひ、唯、調子だけの名となつたが、尚「言ひ立て」風の文句を謡うたものと思はれる。
ほぎ[#「ほぎ」に傍線]の詞には、歌になつたものと、やゝ語りに近いものとがあつた。前者がほぎ[#「ほぎ」に傍線]歌であつて、後者は寿詞《ヨゴト》と称せられた。寿詞は、祝詞の古い形を言
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