ひ浮べて、其報復を欲する意を言ふ処に落ちついたのである。
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……群鳥の わが群れ行《イ》なば 引け鳥の 我が牽け行《イ》なば、哭かじとは 汝は云ふとも、山門《ヤマト》の一本薄《ヒトモトスヽキ》 頸《ウナ》傾《カブ》し 汝が哭かさまく、朝雨の さ霧に彷彿《タタ》むぞ。……(八千矛神――記)
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群鳥のわたるを仰いで、群れ行かうとする事を言ひ、其間に次の発想が考へ浮ばないから、ゆとりを持つ為に、対句として引け鳥を据ゑて、誘ひ立てられて、行かうとする事を述べ、やつと別れた後の女の悲しみに想到して、気強く寂しさに堪へようと云ふ女に反省させる様な心持ちを続けて来てゐる。そして目前の山門《ヤマト》の薄の穂のあり様を半分叙述するかしない中に、うなだれて泣く別後の女の様を考へ、それから其穂を垂らす朝雨に注意が移つて、其細かな粒の霧となつて立ち亘つて居る状を言ひ進める中に、立つと言ふ語《ことば》から転じて幻の浮ぶと言ふ意のたつ[#「たつ」に傍点]に結びつけたのである。此などは、予期から出た技巧として見ると、なか/\容易に出来さうではないが、尻とり文句風に言うて
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