に来て、みいちゃん見に来て臭かつた。
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清造とか、松太郎とか、辰三・簑吉とか、名がしらの、此歌の中にあるものが一人でもあると、謡うて悔しがらせる。何でもない事の様で、讒訴に堪へられぬ憤懣を感じたものである。男の子と女の子とが遊んでゐると、
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男とをなごとあすばんもん(物)。一間《イツケン》まなかに(の?)疵がつく。
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又「男とをなごときっきっき」。痛いと叫ぶと「いたけりや、鼬の糞つけい」と言ふ。
       一五 らつぱ[#「らつぱ」に傍線]を羨む子ども
十年程|此方《このかた》、時々、子どもの謡ふのを聞く。軍人や、洋服を着た学生を見ると「へえたいさん。ちんぽと喇叭と替へてんか」と言ふ。二十年前に子どもであつた私らの知らぬ、軍人羨望或は崇拝である。大正二年、阿蘇山を越して、豊後の竹田辺でも、此歌を旅姿の我々に、女の子の謡ひかけたのを聞いた。勿論、女の子の物をよみ入れてゐた。



底本:「折口信夫全集 3」中央公論社
   1995(平成7)年4月10日初版発行
底本の親本:「『古代研究』第一部 民俗学篇第二」大岡
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