でゆん[#「すでゆん」に傍線]などに近い形で、一般に使はれてゐる事が知れる。謂はゞ沖縄の標準語である。宮良君の苦労によつて訣つた事は、しぢゆん[#「しぢゆん」に傍線]が唯の「生れる」ことでないらしい事である。今度、宮良君が島々を歩く時には、「若返る」「沐浴する」「禊する」などに当る方言を集めて来てくれる様に頼まう。
清明節のしぢ水[#「しぢ水」に傍線]に、死んだ蛇がはまつたら、生き還つて這ひ去つた。其がしぢ水[#「しぢ水」に傍線]の威力を知つた初めだと説くのが、先島一帯の若水の起原説明らしい。此語は其以前ねふすきい[#「ねふすきい」に傍線]さんも、宮古・離島に採訪して来た様である。ある種の動物にはすでる[#「すでる」に傍線]と言ふ生れ方がある。蛇や鳥の様に、死んだ様な静止を続けた物の中から、又新しい生命の強い活動が始まる事である。生れ出た後を見ると、卵があり、殻がある。だから、かうした生れ方を、母胎から出る「生れる」と区別して、琉球語ではすでる[#「すでる」に傍線]と言うたのである。気さくな帰依府びとは、しぢ水[#「しぢ水」に傍線]とも若水とも言ふから、すでる[#「すでる」に傍線]・し
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