供がたくさんつく。たとえば、近衛家から輿入れがあると、それに身分の高い上臈がついて行く。御簾中が正妻だが、ついてきた上臈たちとも、将軍は夫婦関係を結んだ。これは、てかけ、めかけとは言えぬ。てかけというと安っぽいが、正月に挨拶のために親方筋に行くと、三宝が出る、それに手をかけるのが、てかけである。これは合理的だが、ともかく、庇護の下に置かれる、という意味が、てかけ、めかけである。てをかける、めをかけるに特別に意味をもたすが、てかけは、下の者が上の者に保護を仰ぐことを言うらしい。物質的保護を受けることで、そのうち、女だけに、てかけという語が広く行なわれたのである。めかけのほうはまだ問題が残っている。
 御簾中は、上臈に対して、女だから腹を立てるべきだのに、むしろ喜んでいる。つまり、自分のすべきことを身近い者が代わってしてくれるのだと考えた。夫婦関係を長く持続することは、迷惑だと考えることが根本にある。それにはまた、他の理由がある。
 日本紀には、「ことさかのめやつこ」という語が出ている。夫に対して自分が妻であることを辞退するとき、その代わりに夫に与える女の奴隷のことである。ことさかとは、も
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