が故に、追い退《の》けられたのであった。
そう言う聴きてを見あてた刹那《せつな》に、持った執心の深さ。その後、自身の家の中でも、又|廬堂《いおりどう》に近い木立ちの陰でも、或は其処を見おろす山の上からでも、郎女に向ってする、ひとり語りは続けられて居た。
今年八月、当麻の氏人に縁深いお方が、めでたく世にお上りなされたあの時こそ、再|己《おの》が世が来た、とほくそ笑み[#「ほくそ笑み」に傍点]をした――が、氏の神祭りにも、語部を請《しょう》じて、神語りを語らそうともせられなかった。ひきついであった、勅使の参向の節にも、呼び出されて、当麻氏の古物語りを奏上せい、と仰せられるか、と思うて居た予期《あらまし》も、空頼みになった。
此はもう、自身や、自身の祖《おや》たちが、長く覚え伝え、語りついで来た間、こうした事に行き逢おうとは、考えもつかなかった時代《ときよ》が来たのだ、と思うた瞬間、何もかも、見知らぬ世界に追放《やら》われている気がして、唯驚くばかりであった。娯《たの》しみを失いきった語部の古婆は、もう飯を喰べても、味は失うてしまった。水を飲んでも、口をついて、独り語りが囈語《うわごと》のよ
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