松原の上に現れた。併し、俤《おもかげ》に見つづけた其顔ばかりは、ほの暗かった。
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今すこし著《しる》く み姿|顕《あらわ》したまえ――。
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郎女の口よりも、皮膚をつんざいて、あげた叫びである。山腹の紫は、雲となって靉《たなび》き、次第次第に降《さが》る様に見えた。
明るいのは、山際ばかりではなかった。地上は、砂《いさご》の数もよまれるほどである。
しずかに しずかに雲はおりて来る。万法蔵院の香殿・講堂・塔婆・楼閣・山門・僧房・庫裡《くり》、悉《ことごと》く金に、朱に、青に、昼より著《いちじる》く見え、自ら光りを発して居た。
庭の砂の上にすれすれに、雲は揺曳《ようえい》して、そこにありありと半身を顕した尊者の姿が、手にとる様に見えた。匂いやかな笑みを含んだ顔が、はじめて、まともに郎女に向けられた。伏し目に半ば閉じられた目は、此時、姫を認めたように、清《すず》しく見ひらいた。軽くつぐんだ脣《くちびる》は、この女性《にょしょう》に向うて、物を告げてでも居るように、ほぐれて見えた。
郎女は尊さに、目の低《た》れて来る思いがした。だが、此時を過しては
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