した様に、鎮まって居た。夕闇はそろそろ、かぶさって来て居るのに、山裾のひらけた処を占めた寺庭は、白砂が、昼の明りに輝いていた。ここからよく見える二上の頂は、広く、赤々と夕映えている。
姫は、山田の道場の※[#「片+總のつくり」、第3水準1−87−68]《まど》から仰ぐ空の狭さを悲しんでいる間に、何時かここまで来て居たのである。浄域を穢《けが》した物忌みにこもっている身、と言うことを忘れさせぬものが、其でも心の隅にあったのであろう。門の閾《しきみ》から、伸び上るようにして、山の際《は》の空を見入って居た。
暫らくおだやんで居た嵐が、又山に廻ったらしい。だが、寺は物音もない黄昏《たそがれ》だ。
男岳《おのかみ》と女岳《めのかみ》との間になだれをなした大きな曲線《たわ》が、又次第に両方へ聳《そそ》って行っている、此二つの峰の間の広い空際。薄れかかった茜の雲が、急に輝き出して、白銀の炎をあげて来る。山の間《ま》に充満して居た夕闇は、光りに照されて、紫だって動きはじめた。
そうして暫らくは、外に動くもののない明るさ。山の空は、唯白々として、照り出されて居た。肌 肩 脇 胸 豊かな姿が、山の尾上の
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