下げ]
あっし あっし。
あっし あっし あっし。
[#ここで字下げ終わり]
狭い廬《いおり》の中を蹈《ふ》んで廻った。脇目からは、遶道《にょうどう》する群れのように。
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郎女様は、こちらに御座りますか。
[#ここで字下げ終わり]
万法蔵院の婢女が、息をきらして走って来て、何時もなら、許されて居ぬ無作法で、近々と、廬の砌《みぎり》に立って叫んだ。
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なに――。
[#ここで字下げ終わり]
皆の口が、一つであった。
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郎女様か、と思われるあて人が――、み寺の門《かど》に立って居さっせるのを見たで、知らせにまいりました。
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今度は、乳母一人の声が答えた。
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なに、み寺の門に。
[#ここで字下げ終わり]
婢女を先に、行道の群れは、小石を飛す嵐の中を、早足に練り出した。
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あっし あっし あっし ……。
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声は、遠くからも聞えた。大風をつき抜く様な鋭声《とごえ》が、野面《のづら》に伝わる。
万法蔵院は、実に寂《せき》として居た。山風は物忘れ
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