言われずとも、すべての心が、一度に了解して居た。言い難い恐怖にかみずった女たちは、誰一人声を出す者も居なかった。
身狭乳母は、今の今まで、姫の側に寄って、後から姫を抱えて居たのである。皆の人はけはいで、覚め難い夢から覚めたように、目をみひらくと、ああ、何時の間にか、姫は嫗《おむな》の両腕《もろうで》両膝の間には、居させられぬ。一時に、慟哭《どうこく》するような感激が来た。だが長い訓練が、老女の心をとり戻した。凛《りん》として、反り返る様な力が、湧き上った。
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誰《た》ぞ、弓を――。鳴弦《つるうち》じゃ。
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人を待つ間もなかった。彼女自身、壁代《かべしろ》に寄せかけて置いた白木の檀弓《まゆみ》をとり上げて居た。
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それ皆の衆――。反閇《あしぶみ》ぞ。もっと声高《こわだか》に――。あっし、あっし、それ、あっしあっし……。
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若人たちも、一人一人の心は、疾《と》くに飛んで行ってしまって居た。唯一つの声で、警※[#「馬+畢」、198−下段−5]《けいひつ》を発し、反閇《へんばい》した。
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