、躑躅《つつじ》の照る時分になってくれぬかなあ。一年中で、この庭の一番よい時が、待ちどおしいぞ。
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大師藤原恵美押勝朝臣の声は、若々しい、純な欲望の外、何の響きもまじえて居なかった。
十五
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つた つた つた。
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郎女は、一向《ひたすら》、あの音の歩み寄って来る畏《おそろ》しい夜更けを、待つようになった。おとといよりは昨日、昨日よりは今日という風に、其|跫音《あしおと》が間遠になって行き、此頃はふつ[#「ふつ」に傍点]に音せぬようになった。その氷の山に対《むこ》うて居るような、骨の疼《うず》く戦慄《せんりつ》の快感、其が失せて行くのを虞《おそ》れるように、姫は夜毎、鶏のうたい出すまでは、殆、祈る心で待ち続けて居る。
絶望のまま、幾晩も仰ぎ寝たきりで、目は昼よりも寤《さ》めて居た。其間に起る夜の間の現象には、一切心が留らなかった。現にあれほど、郎女の心を有頂天に引き上げた頂板《つし》の面《おもて》の光り輪にすら、明盲《あきじ》いのように、注意は惹《ひ》かれなくなった。ここに来て、疾《と》くに、七日は過ぎ、十日
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