下げ]
こう糸が無駄になっては。
今の間にどしどし績《う》んで置かいでは――。
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乳母の語に、若人たちは又、広々として野や田の面におり立つことを思うて、心がさわだった。そうして、女たちの刈りとった蓮積み車が、廬《いおり》に戻って来ると、何よりも先に、田居への降り道に見た、当麻の邑《むら》の騒ぎの噂である。
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郎女《いらつめ》様のお従兄恵美の若子《わくご》さまのお母《はら》様も、当麻真人のお出じゃげな――。
恵美の御館《みたち》の叔父君の世界、見るような世になった。
兄御を、帥《そつ》の殿に落しておいて、御自身はのり越して、内相の、大師の、とおなりのぼりの御心持ちは、どうあろうのう――。
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あて人に仕えて居ても、女はうっかりすると、人の評判に時を移した。
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やめい やめい。お耳ざわりぞ。
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しまいには、乳母が叱りに出た。だが、身狭刀自《むさのとじ》自身のうちにも、もだもだと咽喉《のど》につまった物のある感じが、残らずには居なかった。そうして、そんなことにかまけることなく、何の訣《わけ》やら知れぬが、一心に糸を績み、機を織って居る育ての姫が、いとおしくてたまらぬのであった。
昼の中多く出た虻《あぶ》は、潜んでしまったが、蚊は仲秋になると、益々あばれ出して来る。日中の興奮で、皆は正体もなく寝た。身狭までが、姫の起き明す灯の明りを避けて、隅の物陰に、深い鼾《いびき》を立てはじめた。
郎女は、断《き》れては織り、織っては断れ、手がだるくなっても、まだ梭《ひ》を放そうともせぬ。
だが、此頃の姫の心は、満ち足ろうて居た。あれほど、夜々《よるよる》見て居た俤人《おもかげびと》の姿も見ずに、安らかな気持ちが続いているのである。
「此機を織りあげて、はようあの素肌のお身を、掩《おお》うてあげたい。」
其ばかり考えて居る。世の中になし遂げられぬもののあると言うことを、あて人は知らぬのであった。
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ちょう ちょう はた はた。
はた はた ちょう……。
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筬《おさ》を流れるように、手もとにくり寄せられる糸が、動かなくなった。引いても扱《こ》いても通らぬ。筬の歯が幾枚も毀《こぼ》れて、糸筋の上にかかって居るのが見える。
郎女は、溜《
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