た》め息《いき》をついた。乳母に問うても、知るまい。女たちを起して聞いた所で、滑らかに動かすことはえすまい。
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どうしたら、よいのだろう。
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姫ははじめて、顔へ偏ってかかって来る髪のうるささを感じた。筬の櫛目《くしめ》を覗いて見た。梭もはたいて見た。
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ああ、何時になったら、したてた衣《ころも》を、お肌へふくよかにお貸し申すことが出来よう。
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もう外の叢《くさむら》で鳴き出した、蟋蟀《こおろぎ》の声を、瞬間思い浮べて居た。
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どれ、およこし遊ばされ。こう直せば、動かぬこともおざるまい――。
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どうやら聞いた気のする声が、機の外にした。
あて人の姫は、何処から来た人とも疑わなかった。唯、そうした好意ある人を、予想して居た時なので、
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見てたもれ。
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機をおりた。
女は尼であった。髪を切って尼そぎにした女は、其も二三度は見かけたことはあったが、剃髪《ていはつ》した尼には会うたことのない姫であった。
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はた はた ちょう ちょう
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元の通りの音が、整って出て来た。
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蓮の糸は、こう言う風では、織れるものではおざりませぬ。もっと寄って御覧《ごろう》じ――。これこう――おわかりかえ。
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当麻語部|姥《うば》の声である。だが、そんなことは、郎女の心には、間題でもなかった。
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おわかりなさるかえ。これこう――。
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姫の心は、こだま[#「こだま」に傍点]の如く聡《さと》くなって居た。此|才伎《てわざ》の経緯《ゆきたて》は、すぐ呑み込まれた。
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織ってごろうじませ。
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姫が、高機に代って入ると、尼は機陰に身を倚《よ》せて立つ。
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はた はた ゆら ゆら。
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音までが、変って澄み上った。
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女鳥《めとり》の わがおおきみの織《おろ》す機。誰《た》が為《た》ねろかも――、御存じ及びでおざりましょうのう。昔、こう、機殿の※[#「片+總のつくり」、第3水準1−87
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