など築《キヅ》き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《マハ》して、大門小門を繋ぐと謂つた要害と、裝飾とに、興味を失ひかけて居るのに、何とした自分だ。おれはまだ現に、出來るなら、宮廷のお目こぼしを頂いて、石に圍はれた家の中で、家の子どもを集め、氏人《ウヂビト》たちを召《ヨ》びつどへて、弓場《ユバ》に精勵させ、棒術《ホコユケ》・大刀かき[#「大刀かき」に傍点]に出精《シユツセイ》させよう、と謂つたことを空想して居る。さうして年々《トシヾヽ》頻繁に、氏神其外の神々を祭つてゐる。其度毎に、家の語部《カタリベ》大伴[#(ノ)]語造《カタリノミヤツコ》の嫗《オムナ》たちを呼んで、之に捉《ツカマ》へ處《ドコロ》もない昔代《ムカシヨ》の物語りをさせて、氏人《ウヂビト》に傾聽を強ひて居る。何だか、空《クウ》な事に力を入れて居たやうに思へてならぬ寂しさだ。
だが、其氏神祭りや、祭りの後宴《ゴエン》に、大勢《オホゼイ》の氏人《ウヂビト》の集ることは、とりわけやかましく言はれて來た、三四年以來の法度《ハツト》である。
こんな溜め息を洩しながら、大伴氏の舊い習しを守つて、どこまでも、宮廷守護の爲の武道の傳
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