]を圧するばかり、篠竹が繁つて居た。沢山の葉筋《はすぢ》が、日をすかして一時にきら/\と光つて見えた。
郎女は、暫らく幾本とも知れぬその光りの筋の、閃き過ぎたのを、※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]の裏に見つめて居た。をとゝひの日の入り方、山の端に見た輝きを思はずには居られなかつたからである。
また一時《いつとき》、廬堂《いほりだう》を廻つて音するものもなかつた。日は段々|闌《た》けて、小昼《こびる》の温みが、ほの暗い郎女の居処にも、ほと/\と感じられて来た。
寺の奴《やつこ》が三四人先に立つて、僧綱が五六人、其に、所化たちの多くとり捲いた一群れが、廬へ来た。
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これが、古《ふる》山田寺だと申します。
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勿体ぶつた、しわがれ声の一人が言つた。
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そんな事は、どうでも――。まづ郎女さまを――。
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噛みつくやうにあせつて居る家長老《いへおとな》額田部子古《ぬかたべのこふる》のがなり声がした。
同時に、表戸は引き剥がされ、其に隣つた幾つかの竪薦《たちごも》をひきちぎる音がした。
づうと這入つて
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