が立つと、段々興味を惹かれる様子が見えて来た。
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こりや、おもしろい。絹の絲と績《う》み麻《を》との間を行くやうな妙な絲の。此で、切れさへしなければなう。
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かうして績《つむ》ぎ蓄《た》めた藕絲は、皆一纏めにして寺々に納入しようと言ふのである。寺には其々《それ/″\》の技女《ぎぢよ》が居て、其絲で、唐土様《もろこしやう》と言ふよりも、天竺風な織物を織るのだと言ふ評判であつた。女たちは、唯|功徳《くどく》の為に絲を績《つむ》いでゐる。其でも、其が幾かせ[#「かせ」に傍点]、幾たま[#「たま」に傍点]と言ふ風に貯つて来ると、言ひ知れぬ愛著を覚えて居た。だが其が実際どんな織物になることやら、其処までは考へないで居た。
若人たちは、茎を折つては、巧みに糸を引き切らぬやうに、長く/\抽き出す。又其粘り気の少いさくい[#「さくい」に傍点]ものを、まるで絹糸を縒り合せるやうに手際よく絲にする間も、ちつとでも口やめる事なく、うき世語りなどをして居た。此は勿論、貴族の家庭では出来ない掟になつて居た。なつて居ても、物珍《ものめ》でする盛りの若人たちには、口を塞
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